[RADICA]19990621-12:30

■ Mail Magazine[ R a d i c a ]ラディーカ   1999年 6月21日(月) 12:30 第364号
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□ [NEWSFLASH] 早読みネット情報
□ [SERIAL]    中国安徽省合肥より  ともざき なお
                  有縁千里


[NEWSFLASH]==========================================□□■
■ 早読みネット情報
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http://www.asahi.com/0621/news/business21001.html
[RADICA]　世界一のお金持ちは、今年も米Microsoft社のビル・ゲ
イツ氏。資産総額900億ドル（約10兆8000億円）。これで５年連続
長者番付首位。日本人では、武富士の武井保雄会長が24位、サント
リーの佐治敬三会長が33位、ソフトバンクの孫正義社長が34位。

http://www.asahi.com/0619/news/national19018.html
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/news05.html
http://www.yomiuri.co.jp/newsj/news04.htm
[RADICA]　asahi.comにも不正アクセスが20日午前０時頃にあり、
トップページが10分ほど書き換えられて表示された。毎日新聞のサ
イトを書き換えられたときと同様、「Hacked ByjGgM」という署名。
次は讀賣？

http://www.yomiuri.co.jp/newsj/news02.htm
[RADICA]　ソニーが平面ブラウン管を放送業務用にも採用。ゆがみ
がないことを売り物に。ちなみに、業務用機器のライバル、松下の
平面ブラウン管は「ゆがまない」というレベルではない。

http://www.kyodo.co.jp/shiryo/special/tokuho.html#kanren6
[RADICA]　2000年問題の対応で、世界中の企業のうち、92％がまだ
対応を完了していないことがわかった。ほぼ完了したと回答した企
業が72％。2000年問題の影響で、世界的な景気後退が起こるという
予測も。

http://www.zakzak.co.jp/top/top2A5.html
[RADICA]　アダルトビデオの顧客名簿が、不正アクセスによって漏
洩。「日コン連」発の情報。

[ RADICA Staffs radica@ninjin.net ]

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■ 中国安徽省合肥より
                                              ともざき なお
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● 有縁千里

「ともざきさん、私はわからない」郭さんは学校の門を出るなり私
に言った。
「どうしてですか？　私はわからない」彼は私がここへ来たこと−
合肥へ来たことがわからないと行って首を振りながら自転車を押し
た。「どうしてこんな所へ」私たちの背中に、早春の日差しがふり
そそいでいた。合肥へ来て10日経った週末のことだ。

　郭さんの住まいは会社から歩いて20分ぐらいのところにあった。
日曜日、私と一緒に食事しましょう、と言うので、街に行ったつい
でに食事をするのかと思ったら、土曜日の夜に電話があって、昼に
うちに来いという。

　おっけー、と返事をして電話を切ったら、間髪入れず、私の上司
から電話があり、明日の夕方日本から来るお客を空港まで出迎えに
行くと言う。その前に会社で仕事の打合せをするということになり、
時間を確認してひとまず電話を切った。予定が重なる時は重なるも
のだ。まぁ、時間的なことは何とかなるだろう。郭さんに言われた
時間に私は会社に行った。

　家までの道すがら、郭さんは何度も首を横に振った。「何故こん
な所へ?ここは田舎ですよ」彼は繰り返し言うのだ。「田舎だから
来たんだよ」という私の言葉にまた首を振った。北京と東京という
都会を経て、私はここへやってきた。田舎は田舎で良いところがあ
るだろう。その時は、地方で暮す不便さをその時はわかっていなか
った私。腹の立つことはあっても、ここへ来ただけのことはあるだ
ろう。今でもその思いに変わりはない。

「彼氏はどうするの？」「このあとはどうするの？　日本に帰るの？
どこか他の都市に行くの？」郭さんの質問攻めにあった。「あのね、
彼氏、じゃないんだって、本人が言うには」と言ったところで、彼
に私たちの複雑な事情などわかる訳はなかった。「彼よりも、ここ
での生活を選んじゃったから、しょうがないのよ」と私は言った。
これは本当。「この後はわからないんじゃないかな。状況が許せば
ここにいるかもしれないし」これから先、長い長い1年のことを考
えて、私はため息をついた。

　郭さんの家に着くと、彼の両親が餃子を作っているところだった。
昔聞いたとおり、揚子江流域付近であるこの辺の住宅には暖房がな
く、お父さんもお母さんもとんでもなく厚着をして餃子を包んでい
た。私が行くと、笑顔で「やあ、いらっしゃい」と出迎えてくれた。
「今ね、餃子作ってるところ。あなた、ともざきさんにお茶だして
あげなさい」と、お母さんは手を休めることなく郭さんに言う。

　郭さんの住まいというのは会社の借り上げ社宅だ。実家はもっと
離れたところにあるらしい。2LDKに１人で住んでいる。この日は、
春から合肥市内の観光学校に通うという親戚の親子が泊り込んでい
たらしく、一緒に食事をすることになった。彼らも台所に忙しく出
入りしている。

　私は、お茶を飲んだり、郭さんのプライベートルームで写真を見
せてもらったりしていた。壁にガールフレンドの写真が貼ってあっ
て、私は郭さんを冷やかした。私は自覚がないんだけど、郭さんは
何度か日本に来たことがあるので、そのたびに私に世話になったと
思っているらしかった。そのことを両親に話しているらしくて「い
つも息子が日本ではお世話になっています」というような感謝の言
葉を聞かされてたまげてしまった。礼を言われるほど世話をしてい
ない自分が恥ずかしくなった。

　台所で炒め物をする音が聞こえ、良いにおいがしてきた。テーブ
ルには皿が並んだ。郭さんが日本で買ってきたというお酒を出して
きて、乾杯した。お母さんが「この子は４人兄弟の末っ子でね。上
の姉二人はお嫁に行っちゃったし、すぐ上の兄は亡くなっちゃった
のよ」と話し出す。そういえば、郭さんが日本に来た時、そんな話
をしたっけな。私が日本の話をすると、皆、神妙に聞いているのが
可笑しかった。「彼女の中国語はあんまり標準的じゃないよ。香港
や南方に友達がいるから、彼女の中国語は南方訛りが入ってるんだ
よ」と郭さんが言う。

　会話も食事も楽しく進んでいった。お母さんが、「こうして会え
たのも縁があるからよ」と、小鍋で暖めた紹興酒を飲みながら言う。
はて？　と首をかしげる私にお父さんが説明して下さる。

有縁千里来相会    縁があれば千里の道も越えて会いに来る
無縁対面不相識    縁がなければ向かいに住んでても会いもしない

　千里の道を越えても会いに来て欲しい人はいるが、彼は来ないだ
ろう。そんな事を考えた。それはきっと縁のないこと。そう考える
と寂しかった。この距離はそう簡単には越えられないのだ。

　食事が済んで、帰り際に郭さんのお母さんは「またいらっしゃい。
そうだわ、来週私たちは家に帰るから、そのときにいっしょにいら
っしゃい。私たちは縁があって出あったのだから」といって送って
くれた。その言葉を聞いて、胸が熱くなった。

　飾らない人たち。普段の暮らし。ささやかで、一生懸命な、その
生き方に涙が出そうだった。自分が世界一幸せな人のような気がし
て嬉しくなった。こんな人達に会えたことは、どんな高価な宝石よ
り嬉しい神様の贈り物。

　帰り道、私は口の中で忘れないようにさっきの言葉を繰り返した。
「有縁千里…」

　これから先、ここで私はどれだけの人に会うのであろうか。きっ
とそれらの人は縁があって会うのだろう。その縁を大事にしたい。
冬の午後のにおいがした。風はまだ冷たかったが、歩いている私に
ふりそそぐ日差しは暖かかった。気がついたら会社は目の前だった。

　冬の日の小さな思い出だ。

[ ともざき なお tomo@ninjin.net ]

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  ★:*:-''☆:*:-''★ 今日のラッキー星座 by アネッセ ★''-:*:☆''-:*:★
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    【Jun 21,1999】   | 人間関係が充実…穏やかな雰囲気の中で過ごせそう
  ★★★★★ | 蟹　座 | お互い様の精神で…周囲に親切にしてもらえそう！
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